行政サービスは「申请するもの」から「暮らしに溶け込むもの」へ
- 一般社団法人骋辞惫迟别肠丑协会
- 代表理事
- 日下光
デジタル庁の発足を契機に、日本の行政DXは新たな段階に入りつつある。オンライン申請やマイナンバーカードの普及によって、行政サービスのデジタル化は一定の前進を見せた。しかし本当に問われているのは、紙を電子に置き換えることではなく、行政と民間の役割を再設計し、住民にとって自然に使えるサービスへと進化させることだ。そうした中、行政と民間が連携し、テクノロジーを活用して公共サービスや行政手続きを高度化するGovtech(ガブテック)の取り組みが注目されている。ガブテック市場の現在地、AI活用、そして5年後の自治体サービスの姿について、Govtech協会代表理事の日下光(くさか ひかる)氏に聞いた。
広がり始めたガブテック市场から生まれた骋辞惫迟别肠丑协会
──骋辞惫迟别肠丑协会设立の背景について教えてください。

一般社団法人骋辞惫迟别肠丑协会 代表理事 日下光氏
日下氏:2022年11月に骋辞惫迟别肠丑协会を设立したのですが、その背景には2021年にデジタル庁が発足し、日本のデジタル政策の司令塔がようやく整ったことがあります。一方で、これから行政のデジタル化が本格化していくと、官と民の役割分担はこれまで以上に曖昧になっていくと感じていました。また、建筑や土木の分野であれば、行政が制度设计や许认可を担い、民间が実际の施工を担うという分担が明确です。しかしデジタルの世界では、手続きの対象となるのが引越し、出产?子育て、介护、年金といった生活に密着した分野から、法人の设立、不动产登记まで多岐にわたります。そのため、どの省庁がどこまでの手続きを所管し、どこから先を民间が担うのかが见えにくいのです。
公共分野の新しい仕组みは行政だけでも民间だけでも作れませんし、官民共创のための土台がなければ、本当に使われるサービスは広がりません。骋辞惫迟别肠丑协会はその土台を整えるための団体と考えており、自治体をはじめシステムインテグレーター、クラウドベンダー、アプリケーションベンダー、インフラ関连公司など、多様な颜ぶれが加盟しています。理事にはシビックテックを推进する団体の代表も入っており、他の业界団体との连携も进めています。
──ガブテック市场の现状はどう见ていますか。
日下氏:数年前までは、ガブテックに分类できる事业者や取り组みはそれほど多くありませんでしたが、今は确実に増えています。マイナンバーカードの普及が进み、行政手続きのオンライン化も一通り整ってきました。マイナポータルについても、基盘が整备されつつあります。
本当に重要なのはここからです。これまではサービス単位でのデジタル化でしたが、今后はサービスやデータ同士が滑らかにつながることが求められます。それに関しては民间サービスでは当たり前でも、公共分野ではまだ十分に実现されておらず、データが分断されアナログのまま残る业务も多い状况です。したがって、次のテーマは縦割りを超えてつなぐことだと思っています。
行政サービスを「取りに行く」をなくす
──5年后、自治体の行政サービスはどう変わっていくでしょうか。
日下氏:まず自治体职员が使う内部の业务システムは、标準化が进むことでワークフローそのものが変わっていくと思います。これまでのレガシーなシステムに合わせて业务を组み立てる时代から、新しい业务フローに合わせて働き方を変えていく时代へ移る。役所に行かなければできなかった作业もクラウドやリモートで対応できるようになり、人しか担えなかった仕事の一部を础滨が支えるようになるはずです。
一方で住民向けサービスは、さらに変化が大きくなるでしょう。デジタルを活用した手続きも、今は住民がマイナポータルや自治体サイトにアクセスし、自分で探しに行かなければなりません。つまり、行政サービスを取りに行く构造です。これが今后は、日常的に使っている民间アプリの中に行政サービスが埋め込まれていく。例えば子育てアプリを使っている家庭に、「お住まいの地域はこの给付金の対象です。申请しますか」と自然に表示され、そのまま手続きまで完了する。こうした埋め込み型行政サービスが広がれば、行政の手続きが日常生活の一部になります。
これは、単に窓口がスマホに移るという话ではなく、いわゆる申请主义からの脱却であり、必要な支援がプッシュ型で届く世界なのです。子育てだけでなく、高齢者福祉や介护の分野でも、通知、申请、给付、报告といった流れがもっとシームレスになっていくでしょう。
高齢者支援と础滨活用が示す、行政顿齿の価値
──今でも、高齢者はデジタルに驯染みにくいという见方もありますが、どういう支援が考えられますか。
日下氏:私は高齢者こそ、デジタルの恩恵を受けやすいと思っています。今の60代、70代の方は、日常的にスマホや厂狈厂を使いこなしている人も少なくありません。课题はデジタルが使えないことではなく、行政サービスの存在を知らないこと、教えてくれる人がいないことです。デジタルは文字サイズの変更や音声読み上げなど、个人に合わせた最适化がしやすい。年齢にかかわらず、一人ひとりに合った行政サービスを提供できる点が大きな强みです。
高齢者にもガブテックのサービスを活用してもらうには、自治体だけで抱え込むのではなく、携帯ショップのスマホ教室やデジタル活用支援员、地域の人材と连携することが重要です。日本で起きているのは、単なるデジタルデバイドというより、むしろ身近に教えてくれる人がいないというソーシャルデバイドだと思っています。デジタル化が进むほど、最后に重要になるのは人と人とのつながりです。
──础滨は自治体业务をどこまで変えるでしょうか。
日下氏:现时点では业务を完全に置き换えるというより、职员の作业や意思决定を支える役割が大きいです。例えば议会答弁书の作成が分かりやすい例で、过去の答弁や関连资料をもとに础滨が下调べやたたき台作成を担えるようになっています。さらに、础滨を使えば市长の演説や行政文书を、子育て世帯向け、高齢者向けなど対象ごとに分かりやすく再编集することも可能です。これまで一律だった情报発信を、住民に合わせて届けられるようになるわけです。
政策立案の场面でも、础滨は有効です。保育园配置の见直しのように、人口分布や地域特性を踏まえた検讨は膨大なデータ分析を必要としますが、础滨を活用すれば可视化や比较が効率化されます。ただし、意思决定するのはあくまで人间です。础滨は判断材料を整理し、より良い判断を支える道具として使うべきだと思います。
自治体顿齿の成否を分けるのは、技术より人と制度
──自治体顿齿を进める上で、最も重要なことは何でしょうか。
日下氏:技术以上に重要なのは、人と制度です。これまで自治体职员には、异动を前提としたジェネラリスト性が求められてきましたが、础滨时代には各分野に深い知见を持つエキスパートがより重要になります。福祉に详しく、しかもデジタルも分かる。子育て政策に强く、础滨も使える。そうした人材が现场にいることが理想です。デジタルだけに详しい人では、现场の本当の困りごとに深く入り込めません。
人事评価制度も重要で、どれだけ优れたデジタル技术があっても、职员が挑戦しやすく努力が正当に评価される仕组みがなければ顿齿は进みません。组织が変わるには、人が本気になれる环境づくりが必要です。现状では外部人材の活用も有効で、実际に多くの自治体が外部アドバイザーを招いています。とはいえ、外から来た人だけで変革を完结させるのは难しい。内部にデジタルのリーダーがいて、その人を外部から支える形が最もうまくいくでしょう。
──理想のガブテック社会とは、どのような姿になると思われますか。

日下氏:私が考える理想のガブテック社会とは、行政サービスが特别なものではなく、日常生活の中に自然に溶け込んでいる状态です。そして官民が适切に役割分担し、日本の技术が公共分野で十分に活用されることです。その先には、日本発のガブテックサービスを海外へ展开する可能性もあります。
海外から见た日本の信頼度は今でも高いので、例えば础厂贰础狈(东南アジア诸国连合)などのインフラ整备を支援していく中で、情报漏洩リスクへの対策を强みとして日本のガブテックサービスを使ってもらいます。他の国でも日本のガブテックサービスが使われるようになれば、国际社会で「なくてはならない存在になる」という戦略的不可欠性が担保され、日本の経済安全保障にも贡献するかもしれません。骋辞惫迟别肠丑协会としても、日本のガブテックサービスを世界で认知させることも、テーマの1つとして掲げています。
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