宇宙に広がる通信活用が人类を进化させる
- 公益财団法人未来工学研究所
- 理事
- 和田 雄志
2021年にはアメリカのロケットで複数の民間人が宇宙旅行を体験、日本でも実業家の前澤友作氏が国際宇宙ステーション滞在を実現させるなど、まさに「宇宙旅行元年」となった。一方で、宇宙を観光旅行の場にするだけでなく、私たちの生活を豊かにするために活用するさまざまな取り組みも進められている。そこに、高速で大容量のデータ通信はどのように利用されるのだろうか。今回は、宇宙と地上を結ぶ最先端の通信技術の役割や、それらの技術活用によって可能になる社会像について考えてみた。それをもとに、宇宙と地上を結ぶ通信によって導かれる人間の未来像について、公益财団法人未来工学研究所の理事 和田雄志氏にお話を伺った。
Society 5.0が実現する社会で求められる課題とは
政府は日本の未来像を、「狩猟(Society 1.0)」「農耕(Society 2.0)」「工業(Society 3.0)」「情報(Society 4.0)」に続く、新しい文化を基盤とする社会「Society 5.0」という指針でまとめている(図1)。Society5.0では、「未来の産業創造と社会変革」「経済?社会的な課題への対応」「基盤的な力の強化」「人材、知、資金の好循環システムの構築」といったことが求められているが、それらを実現するにはなにが必要になるのだろうか。
(図1)内閣府が描く「Society 5.0」
(出典:内阁府の资料)
Society 5.0の中核になるのが、ビッグデータとAIによってサイバー空間とフィジカル空間をシームレスにつなぐ構想だ。その構想を支える基盤として、今後、大容量で高速、セキュアな通信インフラの重要性がますます高まっていくだろう。一方で、持続可能な経済?社会活動を確立していく上では、エネルギーや環境?気候変動、防災、スマートシティなどさまざまな分野において、今後は宇宙空間をICTインフラ基盤として効果的に活用することがより重要になってくると考えられる。
未来の社会事象や科学技術が複合した諸課題に取り組んできた和田氏は、「Society 5.0とはいっても、それ以前から続く狩猟社会や農耕社会、工業社会、情報社会の上に成り立っている社会であることを忘れてはいけません」と指摘する。「コロナ禍において、これまであまり陽が当たらなかったエッセンシャルワーカーといわれる人たちの重要性が再認識されました。Society 5.0においては、そういった人たちも働きやすくなる社会を構築していくべきだと思っています」(和田氏)。
未来工学研究所の理事 和田雄志氏
地上と宇宙を结ぶ高速?大容量通信ネットワークの役割
Society 1.0から積み上げられてきた、農業や漁業、工業といった従来の産業を進化させながら、地球規模の環境やエネルギー問題にも対応していくにも、「宇宙というフロンティアを活用すべき」と和田氏は語る。2021年5月にはNTTとスカパーJSATホールディングスが、新たな宇宙事業「宇宙統合コンピューティング?ネットワーク」の構築を目指すと発表している(図2)。
「宇宙统合コンピューティング?ネットワーク」は、狈罢罢のネットワーク及びコンピューティングインフラとスカパー闯厂础罢の宇宙アセット?事业を活用し、地上から贬础笔厂(高高度基盘ステーション)や宇宙空间の低轨道?静止轨道まで复数の轨道上の通信をネットワークで统合する。さらに、それらの轨道上にある卫星と地上を光无线通信ネットワークで结び、分散コンピューティングによる高度なデータ処理を実现させようとしている。
(図2)狈罢罢とスカパー闯厂础罢が构筑を目指す「宇宙统合コンピューティング?ネットワーク」
(出典:狈罢罢とスカパー闯厂础罢ホールディングスの発表资料)
「宇宙統合コンピューティング?ネットワーク」の活用によって、地上や宇宙で収集したセンシングデータを統合する「宇宙センシング」や、宇宙における大容量通信及びコンピューティング基盤を提供する「宇宙データセンター」、Beyond 5G/6Gを見据えた宇宙コミュニケーション基盤を提供する「宇宙RAN(Radio Access Network)」といった事業が予定されている。
宇宙との高速?大容量通信でなにができるようになるのか
このように、宇宙活用の活発化という背景から、近年は国内外の公司が大量に小型人工卫星を打ち上げ、グローバルにサービスを展开する民间主导のビジネスが活発化している。経済产业省の予测では、2020年から2024年までに最大2400机近くの?型人工卫星が打ち上げられると见られている(写真)。最终的には、低轨道の复数阶层で数万机の小型人工卫星が打ち上げられ、リモートセンシングや卫星インターネットサービスの提供、自然灾害の観测などが行われる计画だ。
(写真)日本の宇宙ベンチャーも积极的に小型人工卫星を开発し、宇宙ビジネスに参入しようとしている
(左はispaceが開発した小型人工衛星、右はSynspectiveが開発した小型人工衛星)(TOKYO SPACE BUSINESS EXHIBITION 2021より)
小型人工卫星には、植物や水の有无、地表や海面の温度、地表の高さ、云の状态などを调べるさまざまな种类のセンサーが搭载されている。それらのセンサーから送られてくる情报を解析すれば、天気予报から気候変动や地盘変动の様子、灾害の被害状况の确认などが分かるようになる。最近では、センサー情报を农场の管理や収穫予测で农业分野に活用したり、渔场の探索などで渔业に活用する动きもある。さらにビジネス分野では、空き地を探して驻车场に适した土地を自动検出するサービスの提供なども検讨されている。
宇宙から地上をスキャンする场合は面単位となるため、その情报量は膨大になる。例えば、太阳光を反射した対象物の色を记録して地表の様子をスキャンする光学センサーは解像度の向上が期待されており、今后も高速?大容量の通信が必要になってくる。人工卫星と地上との高速?大容量通信は、こうした宇宙の活用を支える基盘となる。一方で、地上に设置された多数の滨辞罢センサーからの情报も统合して活用するには、5骋を利用して高速?大容量かつ低遅延にデータ収集する必要がある。
このような技术が普及していけば、自然灾害を事前に予测して警告を発したり、凶作が予想される地域に対して支援が準备できるようになる。「宇宙の开拓は、新ビジネスを生み出すことだけに注力するのではなく、従来の产业をより进化させるためにも活用されるべきです」(和田氏)。
宇宙と身体がつながって生み出される人间の进化
地上だけでなく宇宙でも高速大容量のデータ通信が利用できるようになると、自然现象だけでなくさまざまな社会事象に関しても予测が可能になり、私たちの生活は大きく変わっていくかも知れない。和田氏は、最先端技术の活用を宇宙といったマクロの视点からだけでなく、人间の体というミクロの视点から捉えることも重要であると考える。
ここで和田氏は、20世纪初头、当时の新闻に掲载されていた、「家にいながら映像を见たり、买い物を楽しめるようになる」と书かれた未来予测记事(1901年1月、报知新闻「二十世纪の预言」)を例に上げる。こうした电気通信系のテクノロジーに関する予测は、インターネットの普及などによってほとんど実现しているが、その当时には予测できなかったことがあるという。「それは、人间の体を进化させることについての予测です。すなわち、人间の能力がテクノロジーによって拡张できるということに関しては、ほとんど予测されていないのです」(和田氏)。
テクノロジーの进化は、ロボットによって人间の手や足の力を拡大させ、远隔通信によって视覚と聴覚の机能を拡张させた。ただ、これらの进化は、20世纪のテクノロジーが目指してきたことであると和田氏は见ている。では、今、なぜ人间の体を拡张させることが必要になるのか。「大切なことは、テクノロジーが进化したからなにができるのかを考えるのではなく、社会がどう変わるかを予测してテクノロジーを进化させることです。例えば、日本は今后高齢化が进み人口が减っていくことで、公共の交通机関が使えなくなるという移动の课题があります。それ以外にも、今后は高齢化が进むと程度の差はあれ、视覚障害や聴覚障害、记忆障害などに悩まされる人が増え、それが社会课题になるかもしれません」(和田氏)。
移动の课题に関しては、従来のテクノロジーによって自动运転などで解决できるだろう。その他の课题解决に必要になってくるテクノロジーが、人间の体の拡张であると和田氏は述べる。视覚と聴覚については、すでにアバターロボットの活用などによって地球上のあらゆる场所に目と耳を置くことができるようになりそうだ。それ以外の五感に関して、触覚については最近になってリアルハプティクス技术を活用して、远隔にあるロボットと人间が双方向にスキンシップをとりながら协调作业をする研究が进められるようになった。嗅覚や味覚に関しても、バイオテクノロジーと滨颁罢を融合させた研究がいろいろと进められている。「脳についても、徐々に外部からの测定でその人が考えていることが分かったり、考えるだけでロボットを操作できたりする研究が进んでいます。また、颜の表情や声のパターンを分析して、今その人がどういう気分でいるのかが分かる感情情报処理といった技术の研究も始まりました」(和田氏)。
遠隔操作で人の代わりにカフェで働く分身ロボット「 OriHime-D」
こうした、人间の感覚や思考に関する情报を、地球上のどこからでも送ったり受け取ったりできるインフラが构筑されると、自分の身体が世界中に分散されてつながっているような感覚が得られるかもしれない。さらに、そのインフラを宇宙にも拡张させることで、地球にいながら気軽に宇宙旅行が体験できる新しいエンターテイメントも诞生するかもしれない。2022年は、そんな人类の新しい进化の一歩を踏み出せる年になることに期待したい。
萝莉社のソリューションに関するご质问、ご相谈など
ございましたらお気軽にください。
最新の特集
スマートインフラ
